ホラリー占星術の判断例 1


「銀行から、お金を借りることができますか?」


ある日のこと 次のような質問が持ち込まれました

  質問は、ひじょうにシンプルで、質問者の生活に密着しています。


● 質問は、非常に具体的です

 

  私が西洋占星術を勉強し始めた頃は、このような課題を西洋占星術で解決できるなんて思いもよりませんでした。性格や人生の全体的なことに対する答えは出るだろうけれども、個別に、一つ一つの出来事に特有の明確な答えが出せる占いであることなんて想像もしておらず、たとえそのような技術が存在していたとしても、それを学ぶことさえも難しく、使う事は更に難しいと思っていました。

 

  しかし、西洋占星術の真実は、意外な所に潜んでいたのです。

  昔は、ほとんどの人達(99.99%)が、自分の誕生日を知らなかったのです

 


● この事実を認識した時から、西洋占星術に対する私の気持ちは一変しました

 

  それは、西洋占星術が、誕生日で占う質問よりも具体的なイベントに答えることによって発達をしてきたという真実を物語っているからです。

 

  また、英文の本を読み進めるにつれ、ホラリー占星術の方が、ネイタル占星術よりも先に学ばれていたことも徐々に分かってきました。

 

  何だかちょっと逆(変)だと思いませんか

 

  具体的な質問と、誕生日と、いったいどういう関係があるのでしょうか  

  • 具体的な質問に答える場合には、質問の誕生時の空に散らばる星々の位置を知る必要があります。
  • 誕生日によって判断する場合には、誕生日を知っている必要があります。

  あなたが誕生日を知らない人達の世界に派遣されたとしたら、どちらの方法で占いますか?

 

  誕生日を知らない人に、『銀行からお金を借りる事ができますか?』 と尋ねられて、西洋占星術で答える方法があります。

 

  それを学ばなければ、西洋占星術としては片手落ちです。

 


● では、実際にどのような方法で占っていたのでしょう?

  先の質問 「銀行から・・・ 」 に答えるには、下記のような方法で占っていました。

 

  例題のチャートです

 

● 下記のチャートは、質問を受けた場所と時間に基いて建てたチャートです。

  これなら星々の位置は、質問と同時ですから、緯度経度と時間が特定されれば、どの占い師でも出せます。また、時計やカレンダーも要らないことも分かります。もちろん、占星術師は天文学を学び、星々を観測していましたから現在の時間を割り出すことができました。

 

2014年4月19日(土曜日)、10:21pm JST 135.30E、34.36N ASC17.30 Sagt


● 解き方は次のような手順を踏んでいきます。

 

  まず、質問者(占星術の質問をする人をカレントと呼びます)を示す星を見つけなくてはいけません。質問が生まれた時に東の空に生まれたサインの支配星というモノを採用することになっています。質問が生まれたのと、東の空が生まれたことが同期をすると考えて西洋占星術は成り立っているからです。東の空は射手のサイン、支配星は木星です。ですから、カレントは木星となります。

 

  細かな点としては、木星が直接アセンダントにアスペクトしていませんから、他の惑星を通してアセンダントとコンタクトを取っているかどうかを観察しなくてはいけません。このチャートでは逆行している火星を通して(反射を使って)アセンダントとコンタクトしていますから、木星をカレントの主たる表示体として採用できます。

 

● 次に、銀行の借り入れ金を示す惑星を見つけます。

  これはちょっとここでの説明が難しいので、その説明は省かせてください。8ハウスが銀行のお金[他人のお金]を示します。8ハウスは蟹のサインですから、支配星の月が、銀行のお金ということになります。借り入れるお金(月)とカレント(木星)がミューチャル・レシーブをしていますが、この類の質問ではアスペクトが必須になります。ミューチャル・レシーブは、貸したい、借りたい、という希望が含まれているに違いありません。

 

  『銀行からお金を借りることができますか?』 という質問にYESの答えを得るには、人と物が出会う必要があります。つまり、木星と月の間に、コンタクトをする印が必要になります。後は、それをどうやって見つけ出すのかです。

 

  そこで、月と木星のコンタクトをする様子を探し始めます。

 

● 私たちは、月と木星がアスペクト、あるいは他のコンタクトを形作るかどうかを見つけ出そうとします。

 

  月は1ハウスに見つかり、木星は8ハウスに見つかります。あれ? 木星は7ハウスでは? 確かに7ハウスに入っていますけれども、ハウスは家です。家には、エントランス(玄関に傘を開いたり閉じたりするスペース)の無い家もあるには有りますが、エントランスはほとんどの住宅に有ります。天のハウス[家]も同じです。木星は8ハウスのエントランスに位置していて8ハウスです。カスプは玄関のドアを示すものです。

 

  月は木星をレシーブし、木星は月をレシーブしているミューチャル・リセプションという形を見つけた人もいらっしゃるでしょう。そうか、それで借りれるんだ・・・ では、ありません。ミューチャル・リセプションは、互いに助け合う形ですが、借り入れという具体的な形が成立するには、必ずコンタクトが要ります。つまり、アスペクトと呼ばれる物や、それに準ずる形が必要なのです。


  恋愛の質問であれば、ミューチャル・リセプションは互いにリスペクトしているという意味になり、愛し合っている形でとても有用ですが、会えるとか会えないとかという質問では、リセプションがあっていても、アスペクトが無ければ会う機会は生じません。

 

  • アスペクトは機会を示します
  • ディグニティーは、その良さ⇔悪さ、強さ⇔弱さ、を示します
  • リセプションは、その性質を示します

  銀行からの借り入れでは、やはり具体的な結合、アスペクト(借りるという機会)が必要です。

 

  あぁ、そうか、月は今は150度でアスペクトをしていないけれども、やがて180度のアスペクトをするのか・・・

 

  ちょっと待って下さい。月が木星と180度のアスペクトをするまでには、太陽にも出会いますし、今、月の居る場所から21度も移動しなくてはいけません。月の片側のオーブは12度ですし、木星に行くまでにはサインも超えなければいけません。私たちが、そんな風に惑星を動かして考えても構わないならば、全ての質問にOKが出てしまうと思いませんか?


● 月は・・・

  まず太陽とコンタクトを取ります。この時に、月は自分の光(意向)を太陽に押しつけると考えます。太陽はその月の光を背負って、木星に届ける事ができれば、月と木星はコンタクトを取ることができます。間に入る太陽は光を運ぶ事から、トランスファー(運び屋)を行う役となります。太陽は幸い、前方に何も邪魔をする者(惑星)が無く、木星へと向かい、やがてコンタクトを取ることになります。これで借り入れが行われるのか ・・・ しかしながら、これが判断の全てではありません。

 

  西洋占星術に慣れ親しんだ方々は、火星が逆行していることを見逃しません。太陽と木星のコンタクトよりも早く、火星が逆行してきて木星とアスペクトを取るじゃないか・・・

 

  そうです。明らかにそのタイミングの方が早くやってきます。でも、木星は、火星と太陽の光を集めるコレクター(従ってコレクション)にもなっていないでしょうか? 火星はトリプリシティーで木星をレシーブしていますから、火星は妨害者では無いでしょう。

 

● めでたしめでたし、それならこの銀行からの融資は受けることができる。本当でしょうか

 

  ところが、よくよくチャート(ホロスコープのこと)を眺めていると、別の妨害者(惑星やドラゴン・テイルを含めた幾つかの表示体)が存在していました。これによってこの融資は、旨くいかないことを最終的に結論付けられます。

 


残念な結果となってしまいました

● 結果としてその方は、借りられなくて良かったのですが、物事には順序とプロセスがあるということを学ぶことができます。

 

  天は私達に順序を違えるな、人に物を頼んだら任せてしまえ等々、多くのことを教えています。それが惑星達の動きから分かってくるのです。西洋占星術を学ぶという事は、大自然の法則を日常の生活に活かすように諭される事です。

 

  占いとして西洋占星術を学ぶことがそんなに広い視野を持てる事なのかと気付くまでに、随分と時間が掛ってしまいましたが、初期の西洋占星術にはこのような技術も眠っていた事を分かっていただける例題ともなっています。

 

 ● 借り入れるお金は自分の2ハウス、そのロードの土星では無いのか?

 

  疑問点が浮き彫りにされ、確かめる事ができるのもホラリー占星術の良い点です。もし、借入金が2ハウスで示されるとすれば、アセンダントのロードの木星と借入金を示す土星の間にアスペクトなり、その他の結合の印が示されていれば借り入れられたはずです。

 

  土星と木星の間には、金星によるトランスファー・オブ・ライトがありますから、もしも2ハウスのロードである土星が借入金を示すのであれば、借り入れることが可能であったはずです。でも、結果は借り入れられなかったのです。ですから、銀行からの借り入れを予定しているハウスは8ハウス、8ハウスのロードです。まだ借り入れていない、予定している借入金のハウスとして、確認が取れる一例となりました。

 

  もちろん、借り入れてしまって自分の懐に入ってしまったお金(借入金)は、自分のお金と区別が付きません。それはもう自分のお金(2ハウス)なのです。借入金は何処へ行ったのかというと、8ハウスに借入金の額(多いとか少ないことだけ)として示されます。

 

  この質問への答えとして、火星が木星とアスペクトを取るからというのは、正当な答えです。このアスペクトにはリセプションがありません。したがって、火星と木星にアスペクトがあっても、後のコレクション・オブ・ライトは生じません。このアスペクトで終わってしまうのです。こちらの方が早く経緯を示してしまいますが、惑星の動きを追って頂きたいので上記の事柄を書きました。

 


具体的な経緯は、次のようになりました

  銀行へ借り入れを頼んだクライアントは、銀行から貸せるかもしれないという話に喜びます。水星が示すのはおそらく銀行、7ハウスで示される相手だからです。月はそこからセパレートして、1ハウスに入っています。まるで、私には銀行からの借入金が届けられるという期待まで示しています。クライアントは8ハウスに入っていて、借入金にレシーブされています。お金は借りてほしいし、クライアントはお金を借りたい。見事なミューチャル・リセプションです。

 

  月→太陽→木星 というトランスファー・オブ・ライトがあります。

 

  誰かを通じて、クライアントの意思はお金に届くのでしょうか? そして、借り入れが行われるのでしょうか?

 

  ここで、実際にこの取引に加わった人達を考えてみなければいけません。このお金は不動産取引に必要なお金でした。つまり、クライアント、銀行家、不動産取引業者、という登場人物が浮かび上がります。太陽は間に入る人として、不動産業者と考えて差し支えないでしょう。

 

  そこで、お金をクライアントに貸してほしいとの働きかけがあったのは事実です。

  又、銀行も貸す方向で真剣に考えたことも事実です。

  火星は、この取引を成功させるために口添えをした人物です。三者の中には入っていませんが、話の筋から浮かび上がってきた有力者でした。

 

  それでも、最終的にこの貸付が行われなかったのは・・・

 

  銀行の判断でした。クライアントに返済能力がそこまでは無いと、判断したのです。


  そこまで、このチャートに描かれていていて、事態は実際にその通りに進んで行きました。

 

● このような占星術がベースにあって、占星術の法則が確かめられてきたのです。このような具体的な判断ができることを忘れて、ネイタルの判断に進んでもいいのですが、勢い、占星術が難しくなってしまいます。何故なら、惑星の働きを鵜呑みにするしかなくなるからです。実感を伴わせて学ぶのと、鵜呑みにして学ぶのでは、後々の結果が違ってきます。信じられない占星術を、さも、信じたように言葉を濁すしかなくなります。17世紀以降置き去りにされています。

 

  やはり、物事は歴史を知って、基礎から学ぶべきでしょう。

 


判断に使える、 西洋占星術の基礎からのコース

西洋占星術 スクール



ホラリー占星術は全ての西洋占星術の基礎です

● 西洋占星術とは、天と依頼者が何らかのコミュニケーションを取った時の時間を使って占う占星術の総称です。昔の人は誕生時間を知りませんでしたから、普通は、占星術師が仲立ちをしていました。

  1. 質問の誕生時間   (ホラリー占星術
  2. 人の誕生時間  (ネイタル占星術
  3. イベントの発生時間  (イベント・チャートの判断
  4. 良い時間を決定する・・・(イレクショナル占星術
  5. 社会的な動きを判断する占星術  (マンデン占星術

●  ほぼ、全ての占いで誕生時間はおろか、誕生日さえも分からなかったはずです。それなのに、西洋占星術は素晴らしい発展を遂げてきています

  何故、そんなことを言えるのかというと、上記に示した事柄以外にも・・・

  • 西洋占星術が発展していた当時、誕生日を知る人が少なかった
     カレンダーが売られていない、時計が発達していなかった
     天文学を学んだ人しか、惑星の位置を計算できなかった
     ですから、当然のように例題の多いホラリー占星術が発展しました

  上記のような理由に、反論ができるでしょうか?

  次のような質問をしても、ホラリー占星術が優位に立つでしょう。


  • 多くの例題を取り扱う方が発展するでしょうか、少ない例題が大きな発展をもたらすでしょうか?
  • ネイタルのように、昔は少ない人の誕生日・時間・出生地しか分からなかったのですから、そのネイタルが発達した理由はどのようなものだったのでしょう?

  星占いそのものは、西洋占星術発祥以前から行われてきたでしょう。だからといって、どれくらいのネイタルの誕生日が知られていたのでしょうか?  これでは、誕生時間を知らない人が占星術師のもとを訪れても、その人には質問が許されません。

  • その昔、どれくらいの質問が誕生時間に基いてなされていたものでしょうか?
    おそらく、デルフォイの神殿で神託を受けようとして巡礼に来た人のうち、10,000人に1人ぐらいがかろうじて誕生日を知っていたに違いありません。その他の人達は、デルフォイの神殿の回りに住んでいた占い師に鑑てもらっていたのです。

  こういう事は、占いをしてもらう世間の常識に縛られているお客様は決して考えないものですが、占い師は考えるはずです。誕生時間を知らなかったら、四柱推命の鑑定に行けません。では、どれくらいの昔の人が誕生日や時間を知っていたと思います? 暦はそれほど発達していず、木版の暦を買える人達はとても裕福な人達だったはずです。何故、誕生日に基く占星術がものすごく発達していたのだと考えられるのでしょう? 

● 占いを学ぶ側が、気が付かない 勉強不足というよりも、感性が磨かれていないのでしょう。

  そこに、何の疑問も感ぜずに、誕生時間に基く占いは紀元前から有ったし、西洋占星術誕生当時からすごく発達していたと断言できるのは、どういう根拠があるのでしょうか?

 

  誕生時間に基く西洋占星術は、1世紀以前からありました。それは事実です。書かれている本も連綿と国を超えて翻訳されながら伝わっています。だからといって、もの凄く発達をしていたのかというと、疑問視せざるをえないのです。それよりも、誕生時間を知らない人の方が圧倒的大多数を占めていたことは、想像に難くありません。

  • では、占うとしたら、どのように占われていたのでしょう
  • どの日の、どの時間を使って占いをしていたのでしょう

● 誕生日を知る人がほとんど居なかったという理由から、圧倒的にホラリー占星術で占われていたのは、当然のことです。

 

  朝に質問を受ければ、夕方にはその結論の出る占いも多々あったはずです。質問とその答えを確かめるための時間差が、圧倒的にネイタルとホラリーでは有り過ぎるのです。確かめることによって、より確実に法則に納得がいくはずです。それが、ホラリー占星術です。

  • 失くした鍵はどこ?
  • 私はプロポーズされるの?
  • 試験は受かりますか?
  • この家は安く買えますか?
  • 就職できますか?
  • 彼は、娘のお婿さんなのか?
  • 旅行先のお天気は?

  どれもこれも、短時間で結論の出る質問です。よしんば、間違ったとしても、チャートを再検証することが可能です。選択したハウス、選択した惑星、選択した意味合いを繰り返し学ぶことができます。

西洋占星術の歴史 その1