◆ 西洋占星術の惑星の定義
カルディア人が、天文の観測をし易いように12サインを考案する以前から、黄道帯12星座は空にありました。星座を見ながら人々は、様々な形で星の位置や月の位置を利用していました。季節の変化、方位の取り決め、はては占いまで行っていたことでしょう。占いに使われたのかどうかは不明のままですが、西暦前、500年以上も昔の天体の位置を記録した銘板が残されているそうです。
しかし、西洋占星術は、4つのエレメントという要素を内在させています。このエレメントは、それまでギリシャに3つしかなかったものを、哲学者エンペドクロス(紀元前490年頃~紀元前430年頃)が4つにしたとアリストテレスの『自然学』の中にありますから、西洋占星術という形を整えるに至ったのは、それ以降のことに違いありません。地中海を取り囲む文化圏で発生したことに間違いはありません。
■ 7つの惑星と カルディアン・オーダー
カルディアン・オーダーとは、7つの惑星の並び順を表す言葉です。一週間が七曜日であるように、時間は7つの惑星によって支配されています。つまり、惑星は時間を受け持っているので、西洋占星術上、惑星と名前が付けられていることを示します。ですから、占星術では太陽も月も惑星です。
天文学の世界にも、惑星と定義される天体はあります。それらは、あくまでも天文学上での惑星の定義によって天文学的な惑星とされた星々です。天文学での太陽は恒星、月は地球の衛星ですから、異なるジャンルで使われる定義を持ち込むことは無用のことです。
西洋占星術に戻ると、星々の中で、時間を受け持つ役割を担っているのが惑星です。
それこそ、西洋占星術上、「惑星」という名前が与えられているのです。更に、西洋占星術の天球構造は、いまや天文学的な天球構造とは異なっています。惑星は、その天球構造の中に場所を与えられてもいます。月も太陽も、地球の周りを回る惑星として、天球を与えられているのです。星座を恒星する天球もありますが、全ての恒星たちで、便宜的に一つの天球となっています。天球構造が時間の役割を与えているわけではありません。
時間を受け持っていない星々は、西洋占星術上の惑星ではありません。天文学上の「惑星」という名前に騙されないでください。
そして、7つの惑星はカルディアン・オーダーという並び順で並べられていて、それは遅い順に、土星、木星、火星、太陽、金星、水星、月です。
※ ここには多少、論理の飛躍があります。それは、太陽も月も地球の回りを回っているPlanets(惑星)として昔から考慮されてきたということです。月が地球の衛星であるという概念はありませんでした。しかしながら、太陽も月も天球を持ち、時間を1/7ずつを支配しているというのも事実ですし、紛れもなく西洋占星術の基礎です。又、見えるから、並ばせることができるという点でもトランスサタニアンと呼ばれる天文学の「惑星」とは異質の存在なのです。
● 占星術と12サイン
ジェフリー・コーネリアスの記すところ、天空の予兆や動きを書きとめることは紀元前1000年頃に始まり、その書き留めるという行為によって、人々の天文に関する知識はおおいに増えていったとあります。そして、太陽の軌道を12のシーズンに分けて、12のサインが出来上がったのは、ほぼ紀元前5世紀の新バビロニアでのことです。(The moment of Astrology )
● エレメントの発祥
エレメントについては、既にエレメントのページで述べていますが、再度、歴史的な検証をしていきたく思います。エレメントは当初、占星術の為に発祥したわけではありません。
※ タレス(BC624~BC546) 哲学 としてギリシャに残っていきます。
※ ピュタゴラス(BC570~BC490) 数学者で、宗教家であり、その孫弟子にあたる人にエンペドクロス(BC490年頃~BC430年頃)という人が登場します。
※ エンペドクロスは、それまで3つであったエレメントを、4つにしました。
ここから先はギリシャ哲学と名を変えます。
※ ソクラテス(BC470~BC399)
※ ヒッポクラテス(BC460~BC377) 4つのエレメントを使って医学の書を著わす
※ プラトン(BC427~BC347)
※ アリストテレス(BC382~BC322)
ソクラテス、プラトン、アリストテレスと続くギリシャの哲学は、四つの元素(エレメント)という考え方を練り上げてきました。5つ目の元素についてもアリストテレスは述べており、天上界にあって、それはエーテルからなるとしました。
[ エーテルは精霊と訳されたりします。東洋で言う「気」に近い概念です]
特にアリストテレスは『自然学』という本を著していて(彼の弟子が原稿を寄せ集めたのですが)、5つ目の元素(エーテル)に言及しています。また、元素を4つにしたのはエンペドクロスだと、その中に記しています。その中で彼は、大地が球体であることを幾つもの方法で説明していますから、ヨーロッパ人が、この考え方を知らないわけはありません。マニリウスにも踏襲されていきます。ですから、コロンブスが船を出して航海を続けると、ある時直角に海が落ちていくという考え方は、誰かが面白いエピソードとして語っているだけです。こんなことを学校で、まことしやかに教える方がどこか変です。
地球が丸いという理由は、
① 緯度が異なるところでは星の高度が変わること。
② 地平線に決して沈まない星があること、
③ 月食は地球の影であり、黄道のどの位置でも起きること、
④ 月の満ち欠けは月が球体である為に起こり、月が球であるなら、地球も球であること、など
いくつもの証拠から大地が球体であることを説明し「地 - 球」 という概念を作りあげたのです。
● 西洋占星術の胎動
アリストテレスは、自らの著作の中で既に占星術に付いて語っていますから、西洋占星術が一応の形を整えたのは、12のサインが出来上がった紀元前5世紀のバビロニアから数10年を経て、ギリシャ哲学のエレメントが4つとなったエンペドクロス以降で、4つのエレメントの後、BC450~BC350頃だろうと考えられます。
四元の図
アリストテレスの四元(しげん)の図
基の図には内側の四角形はありません
● 天空の主役
惑星こそ占星術の主役です。エレメントを持つ惑星は、下記の8つが基本で、地球を除くと7つです。
太陽と火星 (ホット & ドライ)
土星と水星 (コールド & ドライ)
木星と地球 (ホット & モイスト)
金星 と 月 (コールド & モイスト)
● エーテルを通す惑星、通さない惑星
このことから、明確なエレメントを持たない惑星はエーテルという5番目のエレメントを地球にまで持ってはいても、考慮できないことになります。明確さに欠けるという事は、考慮の外に置いても構いません。エレメントを持ちませんから、エレメントを配されたサインを受け持つことができません。
(この部分の考察は、足りないと思います)
考察が足りない点は、エーテルって何? そんなの占星術に関係あるの? です。エーテルを見たことも無いし、現代の物理学に出てこない概念ですし、証明のしようが無い部分です。他のページでの説明にあるように、対応関係にある占星術では、神の領域から何かがやって来ていると考えるしかないものです。神が嫌なら、大宇宙の中に潜む生命への何かです。この宇宙を全一統体としている、何かです。
● 恒星に意味があるように
天文学的な惑星も、この世を形作るエレメントを通した作用を持ちませんが、意味は持っているものと思います。ただ、とても小さな影響しか与えないと考えられます。大人には効かず、小人には効くといったフォームを取るのかもしれません。
惑星には、時間を司どるという大義があります。西洋占星術の惑星の定義は、いまだ解決に至っているとは思いませんが、時間の概念を含ませるとしたら、他の定義を思いつけません。
あなたは、それを煮詰めて解決できますか?
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