「星を読むことができるとしたら、それを書いたのは誰?」


ここでは、西洋占星術は宗教である、ということを述べているわけではありません。

西洋占星術 と 信仰

この質問に答える為には、西洋占星術が抱えてきた宗教観について、ぜひとも述べておかなければいけない理由があるので書いています。

 

■ 7世紀から徐々に拡がり始めた占星術の衰退は、占星術の背景となるバックボーンにも影を落としました。技術的なテクニックもさることながら、占星術が元々持っていた哲学的な思想も捨て去ったのです。

 

思想的なものを再構築するためかどうかは定かではありませんが、アラン・レオはとても神智学的なものをバックグラウンドに持ってきました。アラン・レオが生きていた当時、神智学協会はとても大きな影響をヨーロッパ全域に与えていました。アラン・レオもその会員だったようです。この思想は、とてもインド哲学的な影響を受けています。

 

今もその神秘思想は、連綿と続いています。

 

もっとも、アラン・レオは神智学的な思想の断片をアスペクトの解釈等に入れ込んだだけです。神智学的な考え方と、占星術を融合したかったのかどうかまでは分りかねます。ただ、占星術にあるはずの思想の欠落には気が付いていたかもしれません。

 占星術の思想

ディグニティーやレセプションの概念の中には、当然と言えば当然ですが、思想的な概念は入り込んでいません。それは、良いとか悪いとか、強いとか弱いという言葉に直されます。その一方で、ハウスには、倫理的な、あるいは、宗教的とも思える考え方がちりばめられています。それがハウスです。私が感じている明確な思想と思えるものは、「人生は旅」であるという、3ハウス⇔9ハウスの概念だけです。

 

ですから、今のところ、それらハウスに与えられた思想的な概念は、…そう思える節がある…、という程度の曖昧なものです。それらはハウスの概念に潜んでいて、全体を統合する思想は、ある考えに基づいていないと出てこないだろうと思われるのです。それは超自然的なエネルギーが活動している、という考え方です。この超自然的なエネルギーの活動を、古代では「神」と一つの単語で言い表したのかもしれませんし、あるいは、もっと緻密に考えられていたのかもしれませんが、その辺りのところはうかがい知る事ができません。

 

この捉え方は、高次の魂と接触をするという考え方に通じていて、スピリチュアルな方面にも占星術が門戸を開ける要素になっています。

 復興の順番が与えた不幸

占星術が19世紀の後半から現代に向けて花開こうとしていたときに、古い形の占星術がラテン語やギリシャ語からまだ翻訳されずにあって、精神性や宗教性、そして哲学的なものが神智学によって断片的ながら与えられたことは、発展を歪めたものにしてしまったのだと思われます。プロジェクト・ハインドサイトを率いるローバート・ハンド氏は、そう言います。

 

大きな流れの中で受け継がれてきた占星術ですから、精神性、あるいは宗教性といったものは、時代の潮流に乗る形で付随していくものになります。ですから、乱暴な言い方をすれば、多かれ少なかれ、その時代その時代で違和感なく受け取られるものが張り付いていくように、沿わせることができるものです。

 

これは、占星術の不幸の原因にはなりません。20世紀に入ってから、占星術に対する多くの研究がなされ、どうもハウスの概念が違うのではないかと言われ出して、それが元で様々な新しいテクニックが考案されていきます。20世紀の初期に花開こうとしてた占星術でのハウスの概念は、古典的な基礎を欠いたものですから、深い研究者達には何か違和感を感じさせるものがあったのでしょう。石川源晃氏に言わせれば、「ハウスのシステムは信用できない」という言葉になります。さすがに一流の研究者であったと思われます。それが基で、45度法とか、ハーモニクス占星術とか、アステロイドを使った占星術とか、新しい展開を見せることになります。

 

もし、ラテン語やギリシャ語文献からの翻訳が先にあって、その後にスピリチュアルなものが付け加えられていたとしたら、今日のようなモダンな占星術派と古典的な占星術派の戦いとも思えるような様相は、占星術の世界で生じることはなかったことでしょう。

 

つまり、今日の様相は、占星術の世界で伝統的な占星術に対する「占星術の歴史の流れに対する」無知が引き起こしているといっても過言ではないのです。私は以前モダンな占星術を学んでいましたが、それを捨てるのはいとも簡単でした。なぜモダンな占星術に固執するのか、私には理解不能です。何冊かの古典的なものを説明したもの、例えばこの一冊の英語の本を読めば必然的にそれが起こります。

 

 スピリチャアルなもの

現在、多くの占星術師が更に占星術を発展させようとして、バックボーンの構築に入っています。名前の通り「スピリチュアル占星術」というものさえあります。その指し示すものは、占星術のバックボーンにある精神性を指し示すものではなく、まだまだ、「その人のスピリチャルな部分をいじります」、というようなニュアンスで使われています。

 

占星術全体の背景となる哲学なり思想なり精神性なり宗教性の構築は、再考が始まったばかりです。再構築するには、まだまだ長い年月がかかるでしょう。そんなに簡単な作業ではないはずです。

 

 精神性

さて、「星を読むことができるとしたら、それを書いたのは誰?」

高次のエネルギーが存在していて、それが星々の位置を取り決め、そして、私達人間に読み解かせようとする存在の実在なのでしょうか。

 

その解明が占星術に要求されるとすれば、精神性であり宗教性であり哲学です。それらの考え方や感じ方は、まだ体系的に構築されていません。それをやり遂げるのは、あなたかもしれません。

 

2008年 6月 3日

2012年 4月12日再考


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