心の品質 その3. ASCのルーラーと水星


アラビア時代の占星術師達は、月は肉体を示しているとして、心の品質を頼るには、ASCのルーラーと水星を観察しました。

 

その1. その2.を読んでいただいたのでお分かりになっているでしょうけれども、そこでの記述に目立って感情を示すとされる「月」の解説があまり入っていませんでした。その1. その2.は、ほぼ、ウィリアム・リリーのものを参考にしています。ASCのロードは大事に観察しているので個別にその2.で少し書いています。


その2.では、水星と関わってくる他の惑星として書いていますが、ここでは直接ASCのロードを観察していきます。月(感情の事柄)の説明はまるでスルーされてしまったかのように為されていませんが。

 

まず、サインの性質に基づく場所から観察が始まります。サインの性質といっても、牡羊のサインだからとか、双子のサインだからとかではありません。もっとざっくりと、ASCのロードの入っているのがカーディナルなら、速度の速さを示すことから、理解力の速さを示すのだとします。

 

ASCのロードがミュータブル・サインの中ならそれほどの知性を示さないと。

ミュータブル・サインというのは、行きつ戻りつをします。余計な事を学ぶ時に考えるのでしょうか。

 

ASCのロードがフィクスト・サインの中なら、慎重さ、企てに対する貫徹を意味するとあります。なかなかフィクストらしいです。しっかりと時間をかけて学びとる様な雰囲気があります。

 

私のASCのロードは、ちなみにフィクスト・サインに入っています。でも、水星はミュータブル・サインですから打ち消しですねん。


これに加えて両方の惑星が、アングルに入っているのか、ケーダントなのか、サクシダントなのかもとても大事に観察をしています。又しても、月は出てきません。

 

更に、ASCのロードや水星が、オリエンタルに在るのか、オキシデンタルに在るのかによって差を付けられます。

 

これら二つをくっ付けると、ASCのロードや水星が位置していて良いと言われる場所は、オリエンタルであって、アングルかサクシダントです。そうであれば、心の品質、癖、性質は、物事を行う際に安定性を与えてくれる事になります。

 

アブ・アリは同じ文節で、ASCのロードと月は一緒に肉体を表わすと書いていますから、もともと月は心の品質とちょっと違ったもの(おそらく感情面)を示すと考えられてきたのでしょう。でも、リリーは、心の品質を示すのは月と水星だと述べています。そうリリーは表題で書きながら、内容には月の事をほとんどというか、月がアセンダントのロードである時の事以外はまったく短いコメントで済ませています。

リリーは、ネイタルの心の品質に先立ち、個人的な思考を特徴づけるものは、心の中で偶発的に起きることと、好みや傾向によって自覚しているものの二つがあると書いています。まるで、潜在意識を認識しているような書き方です。

 

そのような事を占星術師達はずっと感じていて、連綿と占星術のテキスト類を書いてきたのだと思います。

 

リリーは精神的な品質を探るには、まず、ASCに入っている惑星と、ASCのロードだと極めて明快に述べてから詳細を述べ始めます。


マシャ・ア・ラー(740-815 AD.)は、ASCのロードと水星だと書きます。

 

マシャ・ア・ラーの生徒のアブ・アリ(770-835 AD.)は同じく、ASCのロードと水星だと書きます。

 

ボナタス(13世紀のイタリアの占星家。出生、死亡ともに不明)は、ASCと月によって肉体を表わされているけれども、そのロードであるASCのロードと月のディスポジターは肉体の受け皿であるsoleを表わすと書き始めます。でも、それだけでは足りないとして6つの法則をあげます。ちょっと、難しくなります。

  1. 月と水星
  2. 月と水星の入っているサイン
  3. 月と水星の入っているサインのディスポジター
  4. 月と水星がコンジャンクションしている惑星があれば、それらを考慮
  5. (おそらく)チャートの中で最も作用しているだろう惑星を見つけて、それを使う
  6. 上記の惑星達を助けてくれるだろう、アングルと、そのアングルのサインのディスポジター

5.がいったい何のことか分からないです。どの占星家もチャートを調べる場合に、そのチャートで一番目立っている惑星を探しに行きます。それは、ひょっとしたらASCのロードでは無いかもしれません。

 

昼のチャートであれば、太陽がASC、11ハウス、10ハウス、9ハウス、7ハウスに入っていれば、普通はそれを採用します。夜のチャートであれば、月がそのような状態であるなら採用します。

 

それでも、木星のディグニティーが昼のチャートで10ハウスでとても高い場合もあります。そのような時は太陽(彼も10ハウスだとして)とどちらが強いかを考慮しなくてはいけません。ですから、法則らしい絶対の法則って無いのです。あくまでも、総合的なものです。でも、あるんです。

ちょっと不思議に思えるのが、ASCのロードと明確に書いていない事です。しかし、6.の中に含まれます。

 

ボナタスの説明には、少しばかりトレミーの混入があります。それが、ボナタスのものを難しくしているのかもしれません。


※ 参考文献

  • The judgments of Nativities アブ・アリ・カヤット著 スペインのジョンがラテン語に翻訳したものから英訳した James H. Holden の訳
  • On Nativites マシャ・ア・ラ―著 Benjamin N. Dykesの訳
  • Bonatti on Nativities ボナタス著 Benjamin N. Dykes訳
  • クリスチャン・アストロロジー ウィリアム・リリー著 レグルス出版社

 

 

 

水星 その1.   水星 その2.