西洋占星術の 6ハウスの意味



■ 星占い、西洋占星術の第6ハウス(ジョイは火星)

 

 ハウスの支配星は水星。ジョイとなっている惑星は火星です。

 

 水星にはメッセンジャーという意味があります。1ハウスから数えて6番目に当たる6ハウスに、6番目の惑星である水星の意味が付いているというわけです。

(惑星の並び順は、カルディアン・オーダーによる、♄、♃、♂、☉、♀、☿、☽です。)

 

 ところで、左回りに6番目のハウスを数えていますけれども、これがハウスの数え方です。「0」という概念が無かった時代に作られた占星術ですから、数え方は「序数」という数え方になっています。日本の「数え年」と同じ考え方なのです。例えば、王様のハウス「10ハウス」から6番目のハウスは、3ハウスになります。すると、王様のメッセンジャーは3ハウスということになります。

 

 時々、3ハウスをメッセンジャーのハウスと書かれているものを見ますが、確かに「王様のメッセンジャー」は3ハウスなのです。大体、一般の庶民がメッセンジャー(言伝を携えて誰かに伝えに行く役割りをする人)を雇っているでしょうか? 王様が占星術師を瞑想室に尋ねに行く場合でも、メッセンジャーを使うわけです。とすれば、王様のメッセンジャーは3ハウス(10ハウスからの6番目)になるわけです。

 

 すると、歴史上に3ハウスはメッセンジャーのハウスとして残ってしまうわけです。

 

 あくまでも、私のメッセンジャーが6ハウスであり、王様のメッセンジャーが3ハウスです。

 

 メッセンジャーのハウスが誤解されているような例は、他にあまり見当たりません。おそらく、3番目のサインが ♊ のサインなので、そのロードが水星であることから故意に間違われているのかと推察します。

 

 こうやって、10ハウスからの6番目のハウス、といった数え方を「ハウスを回す」と呼びます。私の財布は2ハウスですし、彼/彼女の財布は、7ハウスからの2番目のハウス、8ハウスになります。私の息子は5ハウスですが、彼の連れ子は7ハウスからの5番目、11ハウスが示すことになります。ハウスを回すのは便利でしょ。

 

 でも、ショートカットも覚えておいてください。父親は4ハウスですが、私(父)の娘が5ハウスだとしても、その娘(5ハウス)の父親は、5ハウスから数えて4番目の8ハウスにはなりません。元のアセンダントになるわけです。これがショートカットです。

 


  第6ハウスは病気に関する事柄を見るのに使われますが… 

 

  多くの場合、ホラリー占星術の質問で病気のことを尋ねられたときに参照するハウスではありません。

 

  ここは、病気の質問以外のときの病気のハウスです。

 

  どんな場合に病気のハウスとして作用するのかというと、コミュニケーションがうまく取れない場合など、その原因がその人の病気、あるは相手の病気にある場合、当事者の6ハウスのルーラーが相手から見えていなかったり、6ハウスのロードが相手の6ハウスに入っていることがよくあります。つまり、事実アスペクトできない、認識できないハウスとして作用します。

 

  また、2ハウスのロードが6ハウスに入っていたりすると、質問によっては、「財布が病気」持ち合わせが無いと判断します。

 

  アセンダントからアスペクトを持てないハウスとして、2ハウスや12ハウス、6ハウスと8ハウスがあります。ここで持てないという意味は、アセンダントをクレヨンで塗りつぶした感覚で、メジャーなアスペクトを持てないという意味です。当然、弱いハウスと評価されました。

 

  4ハウスなどは、アセンダントから90度、スクエアに当たるわけです。7ハウスはオポジションで(180度)、アセンダントと関係を持ちます。

 

アセンダントからの、アバーションのハウス

アセンダントからの、ケーダント + 3ハウス

 


  6ハウスはASCから見えないハウスとして、弱いハウスの一つです。

 

  一般的な意味は、従業員、そして部下のハウスです。仕事のハウスではありません

 

  17世紀の後半に翻訳の間違いが起こりました。“厄介事のハウス”という意味を、“仕事のハウ”としてしまったのです。この為に、仕事のハウスが、10ハウスと6ハウスと二カ所になってしまいました。

 

  これでは都合が悪いので、創作者達は、長期間の仕事を10ハウス、短期間の仕事を6ハウスだと解釈するようにしたのです。間違いを正すことはせずに、解釈の方法を変更したのです。その結果、長い間に渡って変更されずに6ハウスはアルバイト(短期間の仕事)のハウスになってきています。

 

■ 6ハウスは、アルバイト(短期間の仕事)のハウスとは違います

 少し時代を遡ります。すりと、6ハウスに、重労働、奴隷的な労働、病気・疾患、恨み、悪運というものが見つかります。12ハウスと、あまり遜色がないように思われます。

 

 今日広まっている解釈に近い(病気・恨み・悪運の)ようですが、飛んでもいます。

 

 労働をこの部屋に重ねたのは間違いのようです。

 

 間違いは、6ハウスを労働の部屋としたことです。

 

 労働から来る疲労や病は含まれますが、単純に労働は10ハウスです。仕事として捉え、経歴やプロの仕事と捉えるハウスは10ハウスのはずです(厳密には、評価を受ける対象です[10ハウス])。ここのところの分離が曖昧なままです。もちろん、労働といった場合は、雇い主との関係、自分自身の勤務状態の両方が勘案されるべきですが、6ハウスに経歴(キャリア)は絡んでいません。できれば、働かずに一生食えれば、最高の人生だと考えていた古代の占星術師だった一部の人々の考え方です。

 

 それを少し説明させてください。

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典拠          

1.Loeb 版 マニリウスの「アストロノミカ」    

2.有田忠郎氏の同上の訳「天の聖なる学」  

3.ジョン・フローリー氏の apprentice 16 の「Let's Get This Straight」

4.リリーの「クリスチャン・アストロロジー」   

 

  第6ハウスは“porta laboris eritthe” と言われます。それは、労働を表すわけではなく、“厄介事”です。これは同様に12ハウスにもマニリウス(占星詩 Astrolonomica にある)は当てはめています。

 

  マニリウスの著した Astrolonomicaアストロノミカ)の Loeb 版のその箇所には、ラテン語で「porta laboris eritthe」英訳で「portal of toil;」となっています。 labour の意味は、「労働」「仕事」という意味もありますが、英英辞典では「the ordinary affairs of life」“人生の厄介事” とあります。平坦な言い方をすると、「人生で気をもまなくちゃいけない数々の事柄」のような意味です。

 

  有田氏はストレートに「労働の門(既に誤訳です)」と訳されていらっしゃいます。同時にこれは反対側(12室)にも当てはまるとその節で訳されていらっしゃいます。Loeb 版の英訳ももそうなっているので、有田氏の間違いではないと考えられます。有田氏は占星術師ではなくフランス文学を専攻されていっらしゃる学者ですから、さもあらんと思います。17世紀以前の翻訳を探る必要があるかと思いますが、占星術師としては他の文献があるわけですから、そちらを頼った方がいいでしょう。

 

  ジョン・フローリー氏は文脈上からの違いを指摘していて、もし6ハウスが労働のハウスであるならば、有田氏も書いているように、「12ハウスも労働のハウスとなるであろう」と指摘しています。そうなっていないのです。更に、ラテン語から英語に翻訳するときに、当てはめる単語が少なすぎたのだと述べています。この間違いはビクトリア王朝中期後半に、既に始まっているとしています。また、明快に「Porta laboris eritthe」は、マニリウスによってこのハウスに与えられたタイトルではなく、ただここに付いて述べられたものにすぎない。また、この文脈からして も "労働のハウス" でもない。』と書いています。

 

  ウィリアム・リリーは、ホラリーでもネイタルでも、家畜(の労働や売買その他)から得られる利益という記述はありますけれども、一切6ハウスに労働を当てはめていません。

 

  彼のネイタルの章では、彼は6ハウスに次を与えます。『悲しみや気がかりの前兆となる何事か、体の障りやその部分、使用人、小さな家畜、父方の叔父や叔母、風邪引き、内服薬や薬、蜂、鳩、ガチョウ、雌鳥、豚など』です。

 

  12ハウスへの意味の割り当ては、疲労、災いのもと、悪い兆し、好ましからぬ運、破滅や破壊の巣窟、孤独と悲嘆、堕落、落胆、気落ちの・・・等です。6ハウスと12ハウスの区別が付かないくらいよく似ています。6ハウスが労働の門ならば、文脈上12室も当然労働の門でなければいけません。これらから勘案して、「労働の門」と訳すには甚だ疑問を持たざるを得ません。 

 

  これらの一連の記述から考察をすると、文脈上「労働の門」であれば「両者とも失墜の危懼(きく)に悩み、憔悴(しょうすい)している」といった言い回しを使うのだろうかという疑問が湧き上がってきます。労働であれば普通は、「疲弊(ひへい)し、憔悴し」という表現になり、「疲れる」という語が入ってきて当たり前なのではないかと思われます。危懼(きく)に悩み、憔悴(しょうすい)するといった言い回しが適切なのは、やはり英英辞典からの labour の訳「人生の厄介事」です。そして、「12ハウスにも与えられている」という部分を、現代的占星術の分野ではまったく考慮されていません。

 

  書かれている誤訳を鵜呑みにした、よい例です。クロスリファレンスが必要なのです。 

  

  現代占星術の本は、おしなべてこの辺りの考察を欠いたまま書き記されています。ネイタルを読み解くにも、労働(疲労、落胆…)とこじつけられないこともありませんが、ホラリーの質問に至った場合、完全に読み間違える原因となります。 

 

  詳しくは、ジョン・フロウリー氏監修の Apprentice No.16 

 


■ 6ハウスの1つ前、7ハウスで沈みゆく太陽

 

 一日の推移で太陽が6ハウスに入ってくると、そこはケーダント・ハウスです。力は弱くされます。同じケーダントの3ハウスや9ハウスは、アセンダントから60度、120度の位置にあるので、6ハウス(オポジションの180度)の弱さと一線を画しています。

 

  この弱さは、12ハウスにも言えます。弱く、虚弱で、アセンダントから手を差し延べてもらえない場所です。与えられている意味を書き出すと、6ハウスと12ハウスはそっくりです。書き出してみましょう。

"疲労、風邪、病気、災いのもと、悪い兆し、好ましからぬ運、破滅や破壊の巣窟、孤独と悲嘆、堕落、幽閉、落胆、気落ちの・・・"、6ハウスと12ハウスの意味がごっちゃになっていますから、後はご自身で振り分けて下さい。

 

  両神殿(宮・ハウスのこと)の入り口とも、[苦労の正門]となっています。一方はよじ登る運命[12ハウス]、一方は落ち込む運命[6ハウス]です。

 

  とんでもない悪いことを書き連ねてあります。特にケーダントだから弱いんだという説明ではないようです。ケーダントはラテン語の「ちょうつがい」という意味もあるらしいのですが、だからどうなんだ、ということは無いようです。アンギュラーはカーディナル「重要な・主要な」です。じつは、「ちょうつがい」の方にも、「要」という意味はあります。だから、単なる名前なんだと、私は思っています。

 

 


サクシダント サクシデント サクシーダント(succedent)

 

  発音が多少違っていても、どれも同じです。意味はアングル、棒杭、アンカー、ピボットにやがて「続いて行く」です。やっぱり深い意味はありません。「成功」という意味を持っているのかと思ったこともありますが、ちっとも持っていないようです。

 

  ちょと横道にそれましたが、戻りましょう。もともとハウスの順番から行くと1→2→3→4→と並んでいます。当たり前! のように思われますが・・・

 

  カーディナル・ポイントと呼ばれるアセンダント、7ハウス、I.C、M.C、の四ヶ所は、最重要点として全天の回転を支える役を担っていると見ます。視覚的にも分かりやすいでしょう。太陽の上昇、日の入り、上昇から下降へ移行する点と、地の底、下降から上昇へと転じる点です。ここはしっかりと認識できる部分です。2ハウス、5ハウス、8ハウス、11ハウスはそれをひきずっています。

 

  マイナス5度ルールというのは、ハウスの始まりがカスプの前にも(右回りで)広がっていることを表しています。が、(右回りで)いつの間にかサクシダントから、アングルに入り、次にケーダントに入ると、ストンと落ちます。ハウスの概念の多くは右回りの太陽の位置からも考察されていて、サクシデント → アングル → ケーダントと回って行きます。ケーダント・ハウスはエネルギーが減少し、大事な場所から落ちたイメージを持ちます。 

 

  上記、面倒でしょうがご理解下さい。重要事項です。

 

  ここにおいて、やっとケーダント・ハウスが虚弱なハウスであることが、ご理解いただけるものと思います。その4つあるケーダント・ハウスの中でもアセンダントと面的なアスペクトができる3ハウスと9ハウスは、アセンダントの力が及ぶと考えて、最虚弱ではないことになっています。

 

 

■ 6ハウスと12ハウスの違い

  • 6ハウスと12ハウスは意味がよく似ています。どうやって区別しているの? 
  • 6ハウス、災いの兆し、12ハウス、災いの兆し。同じじゃない!
  • 6ハウス、悲しみ、12ハウス、悲しみ、 又、また。
  • 6ハウス、破滅のもと・苦労、12ハウス、破滅のもと・苦労 !

そうです。マニリウスはまったく同程度に悪く捉えていたようです。

 


■ その他の6ハウスの意味に関して、少々間違っている意味

 

  健康

 

  ここでいう健康とは、健康で頑丈な身体を表示星を通して調べることです。ですから、不健康も同時に示します。これは、アセンダントと比較した場合に、不健康を示すハウスとなります。

 

  病気

 

  病気も健康も示す?  不思議だと思いませんか? 

 

  これも、病気かどうかを検討するときとか、病気の種類を鑑みるという意味です。身体の欠陥。働き過ぎ、内臓の病気。いよいよ今日的になってきました。

 

  下僕、従業員、ペット(仔山羊ぐらいまでのもの)、農業経営。

 

  こんな所です。

  ここは地へ潜り込む最初の部分です。肉体や草木は枯れています。魂は精算に向かいます。悪いことを為していたならば、どの神にか懺悔が必要です。神の種類は残念ながら、どの神なのかは書いてありません。閻魔様に会う前に済ませておかないと・・・ここは懺悔が始まる部分です。メソポタミア人は、悪疫と恐怖を司る神が通り道に居ると考えました。恐怖の神のシンボルは「火星」かもしれません。神というからには良い面ももちろん持っているはずです。事実、火星は6ハウスの「ジョイ」です。もう一方のマレフィック土星が「ジョイ」になる場所は、容易に想像が付くでしょう。土星は12ハウスで[ジョイ]です。

 

  カルディアン・オーダーでの配分は水星です。水星がここへ入っても、悪くはないよ ぐらいの意味です。

 

  6ハウスの意味は、隠れた目に見えない細菌や、肉体の諸機関の衰えによってもたらされる、得も言われぬ不安と、体が蝕まれていくことに耐えることと言い直すことができるでしょう。

 

  ただ、ここは病気や疲れからの不安に関係が有るので、その方面の仕事には関係してきます。昔からいわれるように、医師の6ハウスで火星と金星がコンジャンクションしていたら名医だと。看護婦さんの仕事なども、重労働で、しかも病気や風邪引きに関係するので大ありです。

 

  エズラという占星家は6ハウスと12ハウスのペットについて、ひじょうに分かりやすく述べています。「人間を乗せて運べる動物は、12ハウスだよ!」

 

  6ハウスはこんなところです。火星が[ジョイ]で、その性質云々ですが、火星の性質とあまり関わりがないように思えます。しかし、二つのマレフィックで6ハウスと12ハウスを分け合えば、こうなる結果は誰でも予想が付きます。確かにメスを持つ医者(火星)が金星と共にあれば、手術を楽しみもするのでしょう。ドクター、ブラック・JACKのネイタルに


それが、西洋占星術であったとしても、

「あぁ、あなたは、星の言葉を学んだのです・・・」

なんて煙に巻かれかねません。 

 

  そもそも、モダンな占星術でネイタル占星術を行ううえで、6ハウスが仕事の部屋であろうと、10ハウスが仕事の部屋であろうと、意味の無い予測をすることがほとんどですから、どちらでもいいのです。明確に、あなたは将来「陶器職人を経験する」等という予言的な言辞は滅多に聞いたためしはありません。実際にその人がどのような仕事に就くかは、分かりません。あと読みはできます。

 

  テトラビブロスを著わしたプトレマイオスは、ほとんどの人は適職に就いていないと書き留めています。何故なら、仕事は世襲制の場合が多かったからです。農民の子供に生まれれば、科学者の素質を持っていたとしても農民になる人の方が多かったのです。

 

  「外国旅行をする」という予言でも、この頃は誰にでも、ほとんど当てはまってしまいます。

 

  「あなたは、兄弟三人の中で一番末の弟ですが、将来父親の事業を継承します」

等という占断結果を聞いたこともないでしょう。

 

  占い師が、そんな危険なことを言う事は滅多にないからです。

 

  あなたは将来、外国語を習得します。というようなレベルがせいぜいです。

 

  このように具体的な占いを、現代の西洋占星術師達は好みません。それよりも、スピリチュアルな傾向に拍車をかけるように、精神的なレベルの話を前面に出してきます。スピリチュアルな事柄は、豊かであるとか、貧乏であるとかの判断を好きではありません。間違えるからです。