水 星


Mercury

コールド&ドライ、昼夜入れ替わる、男女格が入れ替わる

 

視認できる事が大事な占星術では、水星がはっきり見える場所は、11ハウス、 12ハウス、8ハウス、7ハウス、そしてアセンダントのほんの5ヵ所しかありません。惑星が「強い」とされる場所は、アングルで良く見える場所でなくてはいけません。すると、水星にとっては、アセンダントと7ハウスしかありません。7ハウスは月(感情)の支配する場所なので、水星(思考)は歓迎されませんから、アセンダントしか残らなくなります。水星は、そのアセンダントのジョイです。もちろん、占星術ではアングルにある惑星は強いとされますから、水星がその他の4ハウスや10ハウス等、アングルに入っていれば強いものと考慮します。

 

アセンダントでジョイになる水星の第一義は、脳、あるいは感情を通ってきた考え等、人の頭(第1ハウス)にある表現しなくてはいけないものを言葉にする役目、理解力を担っていることです。話し言葉と、書き言葉の両方を水星は司っています。強い水星はこの作用を明確に表し、良い感情であろうと、悪い感情であろうと、良い考え方であろうと、悪い考え方であろうと、能弁に分かり易く表現する能力で支えます。すなわち、強い水星は理知的に見え、思慮深く、優秀な論客となり、弁舌も非常にさわやかです。

 


水星も月と並んで、変化を表す惑星です。水星の変化はメルクリウスにちなんで、どちらかというと科学的な変化です。牛乳がヨーグルトに変化したり、チーズに変化したり、ぶどうジュースがぶどう酒になったりすることを指しています。月の変化は形の変化であり、主に成長をするプロセス、液体が方円の器に従うなどのことを指しています。


先にも書きましたが、月と違って、水星はアセンダントや12ハウスでも太陽とのコンジャンクションから離れてから、始めて視認し始めることができます。月の場合は必ず7ハウスです。このことから、水星は1ハウスの意味を構築するためにかなり役立っています。1ハウスには体全体を表す土星の意味(物体としての肉体)と共に、会話の意味(水星から取られた)もあります。

神話の中の水星は、アポロンの牛を巧妙に盗んだメリクリウスとして登場します。メリクリウスはアポロンをなだめる為に竪琴を贈ります。アポロン(太陽)もメリクリウス(水星)も、そして、ビーナス(金星)も音楽の神なのですが、水星が音楽を嗜むのは技巧的で精緻で緻密な音楽理論に基いたものとされています。詩句の美しさにも関係するとされます。それもこれも、メリクリウスが神話の中で繰り広げたものによります。きっと古代人は、水星からこれらのバイブレーションを直に感じ取っていたのでしょう。それが神話に組み入れられ、西洋占星術の中にも伝承されてきているのだと思います。


したがって、簡単なものでもいいですから、神話の話の荒筋でも読んでおいた方が占星術の理解を助けてくれます。水星の力です。そう、西洋占星術のナチュラル・ルーラーは水星なのです。


一方、ハウスの方では、西洋占星術のハウスは9ハウスとなっています。水星との関連の無いハウスです。全知の神ゼウス(木星)は知っていましたが、アポロン(太陽)は、誰が自分の牛を盗んでいったのかを知りませんでした。アポロンは占って、従兄弟のメリクリウス(水星)が盗んだ事を知ったのです。過去と未来を占ったのはアポロン(太陽神)です。


今でも、ギリシャのデルフォイの神殿にはアポロンが祭られており、占いの神様として神託を与えてくれるとされています。でも、アポロンそのものは占星術の神とはなりませんでした。9ハウスにその概念を与える為にだけ、関連しています。9ハウスでは太陽がジョイとなり、9ハウスに占いという意味が、太陽神アポロンを通じて与えられました。

占いと太陽神、西洋占星術と水星、占いと9ハウス、これらの関連性は難しいものです。一つの真理を追究する為の学問としての9ハウスの占星術であり、古代の占星術師達が目指していた真理として理解してもいいのではと考えます。