西洋占星術  お金 金銭 財産 資産


 神話における木星の名前は、ゼウス(ユピテル)です。彼は、父親のクロノスに食べられる運命をかいくぐり、彼の最初の妻メティスと共に、クロノスにある飲み物を飲ませ、クロノスが飲み込んだ自分の兄弟たちを吐き出させて救いました。

 

 このことから、解放(自由)を与える惑星となります。ゼウスは助け出した兄弟たちと共に、クロノスが攻め入ってきたのを退散させました。(土星の否・悪・咎に打ち勝つことができるのは、木星だけとされます)。そこで、全天の王となるのです。

 


 木星のイメージは、多くの命を育くむ大樹です。大地に深く根を張り、木の実や花の蜜を、求めるものには自由に得られ、皆で豊かさを享受できる姿です。

 

 それが転じて木星には、食べる物に速やかに替えることのできる「金銭」、いわゆる「お金」、「所有物」、「財産」、「流動資産」という意味が備わりました。

 

 カルディアン・オーダーで惑星を並べると、土星(1ハウス)の次が木星(2ハウス)となります。2ハウスには、「金銭」、「財産」という意味がありますが、これは、木星から導き出された結果です。

  

 17世紀以前のテクストには、1ハウスには土星を、2ハウスには木星と、3ハウスは火星と、下記の図のように(カルディアン・オーダー)通りに支配星が配分されていたのです。

内側に書かれている惑星たちが、ハウスのルーラー

 

 13世紀の西洋占星術師、ボナタスは、次のように書きます。

 

 土星が1番目の惑星として命の息吹(魂)を吹き込まれた物質、肉体を受け持っているとすれば、2番目の天球を占める木星はその体を維持するための“食物”の役目と、精神性を取り仕切っている。

グイード・ボナタス 『Liber Astronomiae』66章 ロバート・ゾラー訳

 


金星 (ビーナス)

 金星は、「お金」の星ではありません。

金星は、喜び、悦び、歓びを表す星です。お金を使って、様々な歓びを追求する惑星です。自分のお金だけではなく、他人のお金までも自由に使って楽しもうとする星です。また、お金を稼ぐことには関係しません。愛の星、歓びの星なのです。

 

 異性の後を追いかける星です。どうして、お金を稼ぐことができるのでしょうか? 金星は、アフロディーテ、ビーナスの化身なのです。ヘパイストスという夫がありながら、多くの男の神や、人間のアドニスとも情交を重ね、浮名を流した星です。他の女神と折り合いの悪い、バランスを欠く星なのです。

 

 美しさを湛えていたことは否定できません。多くの男の神たちを、その魅力で魅了したわけですから、情愛の星であることは間違いありません。でも、彼女にとって稼ぐことは、最も不得手なものの1つでした。

 

 それ(金星で示される人)が、男性であっても、同じことです。昔から、

『色男、金と力は、なかりけり』と言います。