西洋占星術の歴史 2



西洋占星術で押さえるべき、基礎

● 伝統的な西洋占星術を学ぶことで、占星術のベースが理解できます

  1. 先人達の体験に基く占星術です。「どのハウスに入っているから、かくかくしかじかの意味である」というような意味は、基礎を学んだ後に出てきます。

  2. 歴史に基いているといっても、それが権威付けのものでは惹き付けられるものはありません。納得ができるものなのです。何故ならば、体験ができるからです。教えられている事に反対意見を唱えることも無いではありません。しかし、伝統的な占星術を学ぶと、知るだけではなくて、体験に基く判断ができるようになります。

  3. 曖昧な - 何となく - 雰囲気のような - 判断ではありません。歴史的に培われてきた、アスペクト、ディグニティー、リセプションを使います。技術をしっかり学んだとしても、それを使えるレベルまでに持って行くのは、又、別の話です。

お伝えしたい事柄は、西洋占星術の歴史1~3を読んで頂ければ分かりますが、正に技術です

 


例えば、金星が愛の星であるというのは、アフロディーティ、ビーナス(愛と美の女神)の影響です。水星の頭の良さは、マーキュリー(メリクリウス)から取られています。でも、本当に古代人はそれらの意味を惑星から感じ取って神話を作り上げたのかもしれません。だからこそ、西洋占星術の中でも効くのだと思います。

占星術が誕生した時代に、最も近いとされる本

● では、誕生したての西洋占星術はどのような様子をしていたのでしょう

 

それを知る手掛かりは、ほとんど失われていて残っていません。西洋占星術の文献で見つかるのは西暦以前にそれらが行われていたという痕跡に過ぎません。技術的な面に関しては、ようやく西暦1世紀のものが残されているだけです。

 

そうだとしても、その1世紀の本は押さえておくべき最初の物だと思われます。英訳されて出ています。下記の本です。

 

下記の物は『カーメン・アストロロギカム(Carmen Astrologicum)』と呼ばれるシドンのドロセウスという人の書いた、詩形式の占星術のテキストです。右側のものをお勧めします。左側のものに載っていない事柄が一部ですが、書かれています。

 

デイビッド・ピングリー訳

アラビア語版、ラテン語版などから

翻訳

ベンジャミン・ダイクス訳

ウマー・アルタバリ版

アラビア語、ラテン語、パフラビー語など、

複数の言語から翻訳


翻訳者は、右側のものがベンジャミン・N・ダイクス、右側のものはデイビッド・ピングリーで、2005年に亡くなっています。ピングリーは、この本をパーレビ語(古代ペルシャ語)から翻訳されたアラビア語のものを参照しながら訳していると書いています。

 

ベンジャミン・N・ダイクスは、それらに加え、ウマー・アルタバリと呼ばれる占星術師(8~9世紀のアラビア人)の翻訳したもの、ラテン語版などを参照しています。

 


初期の頃の西洋占星術の法則を 集大成した本

● 初期の本としては、まとめられた形式の本として、次に欠かせないのは、下記の本でしょう。下記の物はレトリウスのコンペンディアム(『占星術の概要』とか、大要という意)という本です。とても読み易い英文です。ということは、かなり意訳も含まれているものと思います。

 

『エジプト人、レトリウス』

ジェームス・H・ホールデン訳

● 原本は6世紀頃に書かれたとされていますが、近年あちらこちらに散逸していたラテン語のもの、アラビア語のもの等々を元に英語で復元されています。翻訳者のジェームス・H・ホールディンは実践占星術家で、それ故に占星術師としての視点で翻訳をしています。

 

内容としては、レトリウスの発案になるものではなく、それ以前に流布していた様々な占星術の文献からの集大成のようなもので、古くから伝わる文献を参照しながら書いています。前述のドロセウスの書いたカーメン・アストロロギカム等も参考にして編成しています。

 

● こうして連綿と西洋占星術の技術が伝えられ、伝わり、確かな物が残ってきました。それが17世紀を境に、まったく様相が違ってきたのは何故でしょうか? その答えは分かっていません。伝統的なものが正確に伝えられなかったことだけは確かなのです。

 

近年、上記のような翻訳が為され始めたので、今日、西洋占星術が復興しそうだと言われています。

 

● これら幾つかの本に流れる西洋占星術の源流のようなものに触れると、初期の占星術が今日でも驚くほど発達していたことが分かります。既に使われている技術が、かなり以前に書かれているのです。プライマリー・ディレクションという言葉は17世紀の発案ですが、技術そのものは既に1世紀のシドンのドロセウスの本に出てきています。

 

また、リセプションという言葉の概念こそ後のものですが、考え方は既にドロセウスの書物にコンジャンクションの形で登場しています。

 

アスペクトとか、ボイドという概念も、幾分7~8世紀のアラブのものと説明の仕方は違っていますが、同じものだったのだろうと思わせる所があります。

 


何を持って 復興しそうと言えるのか

● ここへ来て、聞きなれない技術がどんどん登場しているのをご存知でしょうか?

  • トランスファー・オブ・ライト
  • ハウスの、5度ルール
  • コレクション・オブ・ライト
  • アンティッション
  • 月がアスペクトするのは、サインを超えていても可能で、成り立てばボイドにならない
  • サインは左回りで、ハウスは右回り

等々、今から15年ほど前のテキスト類には一切登場していなかったものばかりです。

 

● 何故、このような新しい技術とも思える物が登場してきているのでしょう?

実は、これらはとても古い17世紀以前の占星術には必ず登場していた技術だったからです。

 

既に復興は始まっているのです。これまでに技術的な復興が先になされてきたのですが、残念ながら使い方まではまだキチンと伝わっていません。それでも、少しずつ古典的な技術が登場し出しているという事は、これからもまだまだ出てくるということです。

 

●リセプション アスペクト ディグニティー

 

リセプションという技術は、アスペクト、そして、ディグニティーと共にとても有用な技術です。一昔前までは、アスペクト一辺倒でした。それが、ディグニティーにまで及んできたのはここ、5~6年のこと(2015年時点)です。これからは、リセプションに移っていくでしょう。

 

リセプションはとても難しい技術です。生半可[私もそうでした]に学ぶと間違えます。キチンと古典的な文献類を確認しながら身に付けないと本当に間違えるのです。英文の物を英語圏の人が学んでいても間違えてしまうほど、やっかいなものなのです。

 

したがって、先生と名のつく人は、英文の物を参照しながら学んでいるはずなのです。何故なら、それしか確認の手立てが無いからです。人から聞いて鵜呑みにしてそれを伝えるようでは、源泉を知らないことになり、あやふやな部分を残すことになるからです。私もラテン語やアラビア語で学んでいるわけではありません。少なくとも、英訳されたものを参照して頂きたいのです。

 

何故、西洋占星術を学ぶ上で歴史観が要るかを、多少分かって頂けたものと思います。変遷を知らなければ、どれが紛れ込んだ技術なのか、新規の創案で作られた技術かを見抜けないのです。サインに基いたそこに置かれた太陽の意味合いなど、多少は古典の世界にあったものの、新作や贋作があまりにも多く蔓延っています。それを見抜くには、歴史的な視点を持つしかありません。

 

西洋占星術の歴史 その1