心の品質 その2. 水星と月


理解力を表わすのは特に水星で、感情を表す月はあまりここまでで前面に出てきていません。りりーによると月は、「感情」の植物的な、どの方向へも伸びる性質を示しているとされます。心の持つ興味は、どの方向へも向かうこととなり、理解力にも大いに関係があることになります。確かに興味のある事柄には、強く心が動かされます。

 

その人の持つ理解力の判断には、月と水星以外の惑星を観察しないというわけでは決してありません。特に、アセンダントのロードは常に考慮の対象になります。

 

アセンダントというのは、体の中では口を示します。そこから出る言葉は、ジョイとなっている水星が作り出すものとトラディッショナルな占星術では考えていました。ですから、アセンダント、アセンダントのロード、水星の間には密接な関係があることが分かります。又、1ハウスの支配星は土星ですから、土星とも密接な関係が元々あるわけです。

その1.で良い状態の水星をハッキリさせようと、欠点を浮き彫りにすることで良さを説明したいと試みているわけですが、書いてみるとどういうわけか、欠点ばかりが目立つようです。悪い状態を把握して、良い状態を思い浮かべ、水星に当てはめていってください。

 


悪い状態の水星

『太陽が12ハウスにある人は変な人が多い』というモダンな人達の観察があります。本当に12ハウスの太陽が変な人を作り出すのでしょうか? 私は水星が作り出しているのではないかと思うのです。もう一度、それらの人達の水星の観察を行ってみて下さい。

 

水星は太陽と共に在ることが多いので、見過ごされてしまっているのだと考えます。コンバストです。でも、太陽12ハウスでも変じゃない人も大勢いらっしゃるわけですから、その方達の為にも、観察のし直しは必要です。水星の入っているサインによって、ディスポジターの状態によって、随分と「変」の状態が違うと思います。

 

ここで注意して頂きたいのは、水星はのサインではコンバストにならないということです。理由は書きませんが、そういう風に読んで下さい。

2012年9月10日に、水星が乙女のサインでコンジャンクションします。そのような時はコンバストではないのです。ご興味が有れば、レセプションの項をお読みください。

月と水星の角度が良くないとどのような事が起きるのでしょうか。そうなっている人も多いと思います。許容量と理解力の両方に出る結果、ちょっと間抜けた可愛い人物になります。ね、あんまり頭脳明晰でギラギラしているよりも良いかもしれません。一長一短があって、月並みです。

 

月と水星がスクエアなら、気まぐれ。月と水星がオポジションなら、ちょっと分かったら全部分かったような気になるおっちょこちょいで、何やら落語に出てくる熊さんのようです。そそっかしいですし、危なっかしいです。オポジションが厄介なのは、それがアングルで生じていても全てを駄目にするからです。月と水星が両方とも、アングル。オポジション。良かったとはなりません。

月と水星がトラインなら、理解力も感情も安心してしまいます。緊張が無いのも成長を阻んでしまうものです。良い人には違いありません。お人良しでも、しっかりものの騙されるようなお人良しではありません。

 

水星か月の一方がアングルのハウスでも、入っているサインがカーディナルか、フィクストか等で違ってきますが、フィクストだと相当な頑固者が出来上がりそうです。この時にどちらかがデトリメントで無いことを祈りたいものです。もし、そうなっていたら・・・

まあ、その人物をゆっくり観察して、ご自分で結論を出して下さい。

 


コンバストはさておき、ケーダントの水星ってどういう影響を及ぼすのでしょうか。ケーダントは弱いハウスです。あくまでもホール・サイン・システムでのことを言っています。アセンダントのロードも同時にと考えて下さい。

 

水星とアセンダントのロードの中のどちらかの、一つはアングル、一つはケーダントなら少しは救われるかもしれません。それらのどちらかもケーダントにあると、ストレートに悪意を抱いてしまうと言います。意地悪な気持ちと言い換えた方がいいかもしれません。

 

常に他の人の事を良かれ、幸福あれ、お元気でと、どのような相対する人にも平等に捧げられる人ってとても少ないと思いませんか。練習も要りますし、元々が稀な気持ちなのです。家族や親族に対しては親切心を持っているけれども、電車に乗るといち早く他の人を押しのけてでも家族用の席を取ってしまう・・・ って、家族思いかもしれませんが、万人向けではありません。

水星もアセンダントのロードも、両方ともアングルにある人って元々良い悪いを兼ね備えているのです。0゜か、90゜か、180゜です。その他の条件もあります。サクシダントはどうなの? アングルに準じると考えて下さい。そうでないと、世の中、悪気を持つ人ばかりが沢山になってしまいます。

 

又、水星が悪い場所にあるとして、それに輪をかけてアスペクトしてくる惑星があると思います。これらをどう捉えるかは、沢山のチャートを読んでいくしかありません。土星とアスペクトしているのに、土星がアングルで良い状態のせいか、案外、悪気のない人物だった等々、幾らも見つけることができると思います。

水星のディスポジターも観察ができるようになればいいですね。特に、水星がペレグリンだったりしたら、直ぐにディスポジターを頼りなくもなるものです。ディスポジターが良い状態だったら、ペレグリンの水星でも、割と良い状態になれます。喩えで言うと次のようになります。

 

ペレグリンの惑星は、居宅の無い浮浪者と書かれているもの、巡礼者と書かれているもの、いろいろです。が、巡礼先で一晩の宿を取るとしましょう。ディスポジターの惑星が良ければ、その宿で割と良い部屋を用意されます。ディスポジターとは接待役の惑星ですから、その惑星が黒字経営の宿を運営していると思って下さい。

 

それに対してディスポジターの惑星がこれまた、ペレグリンであるとか、ケーダントに入っているとか、宿の運営に支障をきたしているとすると、浮浪者になったようなペレグリンの水星は、馬小屋で寝なくてはいけないはめになるかもしれないのです。それが、ディスポジターの大事な観察です。

アセンダントのルーラーや、ディスポジターとなる惑星の種類によっても、理解力、ひいては熱意や我意といったものは影響を受けます。どちらかというと、アスペクトしている惑星よりも強いと言ってもいいでしょう。何故なら、アセンダントのロードも、ディスポジターも、より直接的に「意思」と関わってくるからです。実際に、トラディッショナルな占星術ではアスペクトは誕生時間が正確に分からない時や、誕生時間が大よそでも分かっているなら、最後に観察するものです。


水星と関わってくる、他の惑星との意味合い

関わってくる(アセンダントのロードとして、あるいは、ディスポジターとして)惑星が土星なら、これも良い悪いがあるでしょうけれども、悪い方から書きます。よほど土星の状態が悪いと、土星の持つ重たい念とされるもの、嫉妬心、後悔の念、人の持つ物を羨んで嘘をついたり欺いたりすることが、出ます。こんなのが理解力なのかと思われますが、理解力の根底にある「我意」が作り出すものです。

 

良い土星は水星と共に知性を示しますから(土星はその中でも深遠で奥深い伝統的な知恵)、悪かろうはずはありません。奥深過ぎて、直ぐには理解できない風変わりでさえあることになります。それほど深遠なものです。しかし、守れば必ず幸福になる道を真に説きます。

 

例えば、朝早く起きて人の倍働けばそれでいいよ、と言います。コンビニエンスな、パワーストーンを身に付ければ、あるいは神頼みをすれば、明日にでも幸せになれる方法とは雲泥の差がありますけれども、それこそ当たり前の風変わりな説です。

 

土星の状態が良ければ、水星と関わることで、用心深さ、貞節、辛抱強さを与えてくれます。


木星は一般に良い惑星ですが、木星もエネルギーの少ない時があります。アセンダントのロードである惑星が悪い状態で、ペレグリンとなったような水星と関係を持つなら、アスペクトなど関係なく恥知らずを作り出します。破廉恥。自分のものを出し惜しみします。抱え込みたがる。物を捨てません。一般に木星の持つ高潔さとは裏腹に、告げ口をする人物となります。「断捨離」の本でも贈りたいものですが、たぶん、断捨離の本の方を捨てるでしょうね。捨てないか…

 

ということは、木星がアセンダントのロードとなり良い状態にあれば、水星と関係づけられていたら、理解力のある高潔な考え方をする人になります。もちろん気高くもなります。良い木星も少ないものです。

 

良い木星であれば、正直さ、多くの事を学ぶ姿勢、高潔な判断力などをその人にもたらします。


火星なら、良くても関係が無い方がいいと思っているのに、アセンダントのロードが火星、ディスポジターが火星等、その火星がペレグリンなどになっていたら、そりゃもう火星の意味を持つ悪さを前面に押し出してきます。理解力など、どこへやらです。自分に目を向けてもらいたい、故に、頭を働かせるのですね。ピーピー言って、とにかく、長い時間しゃべります。世の中、そうそう旨く行きません。へまを、考えた末にやるのも、この人です。回りの人は滑稽で笑いそうになるのですが、堪えないと。

 

良い火星なら、強い統率力をその人に与えます。その統率力のお陰で名声さえも得ます。又、大胆な押しの強さとも言い変えられます。


金星も木星に劣らず良い惑星です。アセンダントのロード、あるいは水星のディスポジターになっていると、そして、悪い水星であり、金星も悪い状態なら、その持ち主が女性なら、男をたぶらかして生活することに意を注ぐことになります。男性なら、ヒモとまでは言いませんが、鵜飼の宗匠のように人を働かせて食べていきます。知恵をそう回して使うなら、時代によっては、良いかもしれません。

 

アセンダントのロードである金星が良い状態なら、それと金星が強く関係していても、ストレートに理解力に出ると書かれている本はあまり見ません。体に出ると。健康、ハンサム、美人、表情豊か、愛らしさ、etc.

 

う~ん。理解力を、自分の美の為に使い果たしてしまうのでしょうか。確かに優れて美人とかハンサムって、ダサイ洋服はお召しになっていなくて、お洒落でスマートでセンスが良いです。


太陽がアセンダントのルーラーや、ディスポジターで悪い状態なら。

 

良い事なら沢山書かれていますが、悪い事はそこから判断しなくてはいけません。太陽の場所によっても、水星に良いスピーチ力を与えてくれます。特に、太陽が悪い惑星とのどのような関係も持たなければ、太陽の持つ意味から、深い知性(真理に通じる)、身軽さと器用さ(太陽は早い惑星です。平均スピードは水星と同じですから)、天与の能力(天与です)、神への怖れ(太陽は神の象徴です)、および安定性(スピードにばらつきがありません)、一意の場所を占めること(黄道を占めます)と、統治力(これぞ太陽の力です)を示すことになります。

 

太陽が悪い状態というのは、マレフィックな惑星にレシーブされていたり、アセンダントにマレフィックな惑星があったりする場合ですが、そうであっても、それ(良いスピーチ)は残され、ただ、内容が極めて胡散臭いものになります。

 

良い状態の太陽と水星がコンジャンクションしているなら、そこにレセプションがあるなら、野心家であり、高い志に燃えます。


がアセンダントのロードであったならどうなるのでしょうか。

 

月と水星はよほど相性が悪いのでしょう。強く関係付けられていれば、のっけから、情緒不安定と、今にも崩れそうに落ち着きが無いと書かれています。良い月ならどうなるのでしょうか?  水星の跳ねっ返りを押さえてくれます。モラルを与えてくれます。

 

ここでも、月が悪い状態であるのか無いのかを観察しなくてはいけません。ケーダント、コンバスト、太陽とのオポジション、マレフィックとの関係、月が山羊や水瓶のサインに入っているだけでも、それはマレフィックと関係があることになります。マレフィックがアセンダントに在るか。テイルに月が近付いていないか。

 

悪い月は、これは再々出てきていますが、愚かさを振り蒔きます。蟹のサインはカーディナルで、全天中一番早い事で知られています。もし月が悪い状態であるなら、水星の早とちりはこのサインが一番秀でています。又、理解力とは関係がありませんが、悪い月はぶかっこうに体を太らせます。それは、月が肉体をも示すからです。

 

良い月なら、特に指図をするサインに入っていて、水星がそれを受け取るサインにあるなら、先にも書きました、モラルを持った人となります。感情も理解力に影響を与えるのです。これは、下段に例をあげておきます。


水星自身がアセンダントのロードであるなら。

 

水星がアセンダントのロードになるのは、双子と乙女のサインです。水星が風のサインの方を好むとすれば、のサインに入っている方が好ましく、そこでは充分な水星の能力をネイティブに与えることになります。つまり、アセンダントがのサインで、水星がのサインに入っているような時です。水星の意味そのものを与えると考えて差し支えありません。雄弁さ、賢明さ、優美さ、美しさ、物を書く能力、知識、ものを創案すること、組み立てること等に卓越した能力を付与されます。アセンダントがの場合は、必ずは10ハウスになるので、この場合の水星はアングルを得ています。

 

もしそこで、悪い惑星に悪い方法で出会っていなければ、素晴らしい知性の持ち主として知られることになるでしょう。

 

しかし、水星がアセンダントでも10ハウスにも無いなら、水星は入っているサイン、そして入っているハウスに関わりながら、良くされたり、スポイルされたりすることになります。悪いという段階にも幾つかあると思いますが、悪くされた水星は、たとえアセンダントのルーラーであろうとも、ネイティブは人をだまし、嘘つきで、悪い芸術に傾斜し、何らかの意地悪さを持ち、贈賄を求めることになります。詐欺を働く人物にもなりがちです。


この後の判断は、月と水星のアスペクトに付いて述べたように、水星(理解力の惑星)と他の惑星のアスペクトの判断になります。

 

  • アプローチ・アスペクトを為していたらどうなるのか
  • セパレート・アスペクトを為していたらどうなるとか
  • トランスレーション・オブ・ライトをしていたらどうなるのか
  • アンティッションをどう考慮するのか
    という判断に移る事になります。あまりにも繁雑になるので、ホームページでは以降を割愛します。

おそらく、興味のお有りになる方は、一気にお読みになられたと思いますし、あまり記憶を必要とすること無く、理解ができれば頭に入ってしまうと思います。こういうい風なものがトラディッショナルな占星術です。


 

 ネイタル 水星と月 1.

 


人々の理解力というのは、価値観や感情に左右されるものです。どう否定しても、物指しがその人の中に培われていくものです。

 

人々の失敗談は楽しいものです。でも、そんなマイナスな事は聞きたくも無いという、超プラス思考の人もいらっしゃるかもしれません。でも、聞きたくも無いという前に、その人達にはそんな話は届けられないのかもしれません。

 

この話の、感情(グローバルでトータルなもの)が理解力に影響を与えるということが分かる人も、分からない人もいらっしゃるかと思いますが、それが理解力です。

※ 参考文献

  • The judgments of Nativities アブ・アリ・カヤット著 スペインのジョンがラテン語に翻訳したものから英訳した James H. Holden の訳
  • On Nativites マシャ・ア・ラ―著 Benjamin N. Dykes の訳
  • クリスチャン・アストロロジー ウィリアム・リリー著 レグルス出版社

この他に、●ボナタスが魂soul」と呼ぶBonatti On Nativitiesの中で展開する、人の本質的なものの判断方法を学ぶことで、現代で語られるところの性格分析のような物が、トラディッショナルな占星術を通じてでも一応できることになります。

 

ここに記述した水星と月によって示される理解力と感情のバランスだけでは、まだまだ、その人らしさが浮かび上がってきません。ぜひ、Bonatti On Nativitesを紐解いてみて下さい。


 

水星と月 その3.