西洋占星術の 12個のハウス

The 12 Houses 


ハウス

 

  ハウス右回りプライマリー・モーション)の概念が強く残る構成要素です。

   ハウスは、いつごろから使われていたのか、ハッキリと書かれている文献はありません。

  

  サインは左回り(セカンダリー・モーション)で組み立てられています。

  サインは、天にある12星座から名前を借りてきていることはご存知だろうと思います。

 

  サインと星座は、違います。これを、ごっちゃにする方は 

「ハウスって、何ですかね?」

こう尋ねられて一言で答えられるのかというと、難しいです。まずは、図でもって把握して頂いた方が早いかもしれません。サインと別の概念です。同じ12という数ですが、ネイタルのチャートのハウスはともかく、ホラリーのチャートのハウスは不ぞろい極まりありません。だから、ホラリー占星術からハウスを理解した方が早いのです。サインの方も、天のハウスと呼ばれることもあります。

 

2004年9月21日(火曜)JST 10:28am, 137.00E 36.44N

 

  星占いに携わっている私達にとってあまりにも当たり前のハウスという概念が、実は一般の人々にとっては全く何のことかが分かりません。現代の言葉にそぐわないものの一つです。現代の言葉にそぐわない、とは、物理学的な世界観と隔絶している概念だということです。そういう「ハウス」であって、何かが住む「家」ではありません。

 

  太陽星座占いの12星座、専門的には12のサインという分け方はご存じだろうと思います。星占いにはもう一つ12に分けるものがあって、それが12ハウス・システムです。

 

  乙女座(乙女のサイン)とか獅子座(獅子のサイン)とかともちょっと違っていて、ここではハウスの方を説明します。説明をするよりも図をご覧下さい。下図の、赤い線で囲まれた部分は10ハウスと呼ばれる場所を示しています。ホロスコープ作成ソフトで示されるカスプで区切られた部分とも、幾分違っています。この赤い線は頭の中で構築しなくてはいけませんし、とても曖昧でも構わないものです。

チャートに描かれる10ハウスと、実際の10ハウスとして認識すべき広がり(赤枠)

 

  ホロスコープあるいはチャートと呼ばれる西洋占星術の図表に向かうと、大概上記の図のようなものが示されます。向かって左側が太陽の昇る所で、東です。北半球での日時計のように、時間と共に右回りにチャートは動いて行きます。

 

  ハウスというのはその東から太陽の進行方向に順に組み立てられて作られたのですが、ご覧のように、どういうわけか番号は逆に付いています。図に基づくと番号は逆時計回りですね。これをハウスと言います。

 

  現在、太陽が昇る東側から地底に向かって1番目のハウスを1ハウスと呼びます。上図で赤い線で囲んで示した所は、ミッド・ヘブン、10ハウスです。

 

  サインの角度数は左り回りに数えます。西洋占星術では、数字は標準として左り回りに数えるので、ハウスの番号もこの数字の数え方に従ったのでしょう。ハウスの組み立てられ方は、太陽の進行とともに時間も時計回りで示されるように、右回りです。

 

  大昔、この意味がよく分かっていたのはハウスに番号は付けられておらず、1ハウスのことをアセンダントとかホロスコープ、2ハウスの事を冥府への門とか、4ハウスを天底とか意味合いで呼んでいたからです。簡単に数字にしてしまうことによって意味が分かりずらくなりました。

 

 

  話は込み入ってきます。一昔前のヨーロッパの大学では占星術を医学には必須の学科の一つとして教えていました。習い始めには便宜的に説明のしやすいイコール・ハウスシステムというものを使い、サインの他にも30度ずつのハウスも12ありますよと教えられたのだと思います。

 

  上級になってくると、ハウスはサインとイコールで無いことも習っていくはずです。トレミーという学者の書いた本『テトラビブロス』に基ずくと、上の図の赤い線で囲んだ10ハウスは、黒い線で囲った10ハウスの部分と微妙にずれてきます。そして、この赤い線で囲った部分こそが10ハウスなのです。

 

  M.Cと書かれているのはカスプと呼ばれる10ハウスの玄関ドアに当たる部分です。玄関の前に5度ほどエントランスがあります。これを5度ルールと言います。トレミーという学者が著したテトラビブロスには、概にこの5度ルールというイコール・ハウスシステムを逸脱する考え方が述べられていますから、既に遠い昔からイコール・ハウスシステム以外のハウス・システムを使っていたことが分かります。

 

1ハウスと、エントランスを含む赤枠の1ハウス

 

  カスプは5度遡ると言っても、サインの境界を超えません。従って、カスプのある部分によって、5度遡れたり、遡られなかったりすることになります。上図では1ハウスは5度遡れますが、2ハウスはその前2~3度だけしか遡れません。サインを超えるからです。エントランスの狭い2ハウスになりました。5度以上遡れることもあります。

 

  この図は、アセンダント、1ハウスを示す図です。赤い線で囲われた部分がほぼ1ハウスです。サインは30度ずつハッキリと区分できますが、ハウスはとても曖昧な部分が在ることが示されいます。この世は、決められた事柄と曖昧な事柄の二つが重なり合っていることを如実に示しているようなものです。


  ハウスの意味は一つだけの理由で成り立っているわけではありません。太陽との関係がもっとも強いと言えますが、オポジションになったハウスの意味を加味する事も忘れられていません。そして、モダンな占星術では顧みられなかったジョイという概念が、意外にもハウスの意味を捉えるのに大きな役割を果たしています。

 

  サインの方の意味は、大きな時間、太陽の季節による変化から来る意味合いが主になっています。短かな時間、日々の太陽の動きにつれて変化する事柄は、ハウスの意味に加味されていきます。そしてサインとハウスの関係についてマニリウス※1は書きます。

 

  『どのような星位でも、全てのサインはハウスの中に占められる

   空によって影響される。位置は星を制し、利益を得るか傷つけ

   るパワーを星々に与える。各サインはその回転に従って、天そ

   のものが告知する天の影響を受け取り、その位置の性質を波及

   させ、その領域にある支配権を行使し、それらサインが通り過

   ぎる時、その性質の中に自身のものを服従させる… 』

  マニリウス、アストロノミカ II-860節    

 

  このように、ハウスの影響をサインが受け取ると書いていますから、ハウスの意味を正確に把握する事は占星術上の一大事です。

 

  卑近な例は、アングルに入っている惑星は強いということを経験していくと理解できます。惑星達もハウスの影響を受けているからです。

 


  4ハウス 10ハウス

  3ハウス  9ハウス

  2ハウス  8ハウス

  1ハウス  7ハウス

 12ハウス  6ハウス

 11ハウス  5ハウス

 


※1 マルクス・マニリウスというギリシャ人が、『アストロノミカ』(西暦10年、有田忠郎氏[フランス文学学者]による日本語訳『(天の聖なる学)』も出ている)という、西洋占星術の技法を踏まえた占星詩(抒情詩)を著した。抜粋はそこから。英語版からの訳はHPの筆者 Kuni. Kawachi