占星家達の格言


● 占いに向かう態度

 

  古代の占い師たちがどのような態度で占いを生業とし、どのような生き方を良しとしてきたのか、彼らの書き残した書物から紐解いていきたいと思います。現代に生きる我々も、襟を正す意味で読みたいと思います。

 


● Girolamo Cardano (ジェロラモ・カルダーノ)

  ジェロラモ・カルダーノ(9月24日1501年 – 9月21日1576年)はイタリアの医師で、占星術師で、数学者で、自身を賭博師と名乗っていました。ウィリアム・リリーによって英訳された素晴らしい格言を残しています。数学の世界では、師匠から弟子への相伝であった数秘術の延長線上のものであった数学を、世間に開かれた数学として打ち立てた立役者になったことで有名です。リリーが英訳した格言集、Anima Astrologieの中から抜粋して紹介し、その意図をくみ取ってみたいと思います。

 

The Astrological Aphorisms Of Cardano

 15. Always deliver judgments from the Stars in general terms, or if you do otherwise let it be when you have very evident testimonies and in great and weighty matters.

 15. 常に、星達の一般的な意味から判断を下せ。又は、あなたが非常に明らかな証拠と、重要で力のある大きく重い事態に気付いているなら、それ(普通の意味)を放っておいて、違った形の判断を下せ。

 

  逸脱は、極力避けなさいと書いています。次の格言と合わせて読むと、あまりに増長な判断は嫌味になるだけだと言っています。

 

  逸脱はしょっちゅう起きるのかというと、しょっちゅうは起きません。一般的にチャートは、普通に刻まれている証拠だけで充分読んでいけます。逸脱した例とは、例えば、仕事の質問で一般的には二つの仕事を比べる時は、10ハウスのロードと、10ハウスのサインのトリプリシティーとなった惑星を比較するのですが、10ハウスのロードとミューチャル・レシーブをしている惑星を採用せよとは過去のどのような文献にもありません。しかし、まるでチャートはそれを採用せよと語るように惑星を置いている場合があります。

 

  そのような場合には、逸脱はOKですし、ちゃんとした理由が付けられるものです。

 


 16. We ought not to use arguments or tedious discourses in giving judgment, much less flatteries, but only to pronounce what is known by experience and firm reason.

 16. 我々は占断のさいに、退屈な回りくどい講釈を述べるべきではない。いわんやおべっかをや。経験ときちんとした理由によってのみ、知ることができた事を言明すべきである。

 

  ここに書かれている格言は、我々がついつい犯してしまう、占星術的な知識を振り回して何でもかんでもチャートから読みとろうとする態度を戒めてもいます。

 

  数多くの判断による間違いは、間違いというよりも、その増長さと時間を長引かせる為(現代の占い師達は時間によって縛られている)に発生していると言っても過言ではありません。答えは、一言で済む場合もあるのです。

 

  次の昇級が決まるかどうかは、イエスかノーで出ます。そこに、過去にどう思っていたか、今はどう思っているか、これからその他に何が起きるのか等は、全て増長な話に過ぎません。極めて重大な証言がチャートに出ていない限り、それらに応える必要がないと、カルダンは格言の15で語っています。

 

  格言の16は、現代の占い師達が時間を長引かせる事によって日々のパンを得ているということを分かって書いているわけではありません。しかし、一方で、占い師が清廉であることを求めています。我々

の心の中にもそれは在るはずのものです。

 

  もう一つの占い師として陥り易い欠点も、格言16は戒めています。それは、チャートから、質問されたより以上の事を、私には読み解けるという占い師としてのスキルを誇張せんが為の鑑定を戒めているのです。技術がより洗練されて来ると、私にはこれも読める、更に読めると誇張したくなるものです。しかしながら、それを行う事はクライアントに迷惑な、時間のロス、お金のロスにつながっていく事に気が付かないのです。

 

  クライアントが知りたいのは、未来への確かな展望による安心感です。たとえそれが悪い結果であろうと、クライアントは対処方法を考えます。