ディグニティー


ディグニティーには、惑星がサインの位置でその占めている場所でどの様な良さや悪さを持つのかを表すエッセンシャル・ディグニティーと、それ以外の要素によって、惑星が強くなったり弱くなったりするアクシデンタル・ディグニティーと呼ばれる2つのものがあります。

 

エッセンシャル・ディグニティーは、牡羊のサインに火星が入っていれば、相当の期間の間、火星はドミサイル(サインのルーラーとして)のエッセンシャル・ディグニティーを得続けます。

 

太陽が牡羊のサインに入っていれば、30日間、イグザルテーションのディグニティーを得続けます。これも、エッセンシャル・ディグニティーです。

アングルに入っている、コンバストから逃れている、良い惑星とベネフィックなアスペクトを持つ、良い恒星とコンジャンクションしている、ドラゴンヘッドとコンジャンクションしている等、どちらかというと僅かの時間だけ強さを得たり、ドラゴンテイルとコンジャンクションしている、逆行である、ケーダントハウスに入っている等、僅かの時間だけ弱くされたりする事柄を、アクシデンタル・ディグニティーと言います。

 

大ざっぱに、サイン位置に関わるものをエッセンシャル・ディグニティーと呼び、それ以外のものをアクシデンタル・ディグニティーと見定めた方が早いです。

 


エッセンシャル・ディグニティーは、表を見なければ確かめられません。最近のチャート作成ソフトは計算をしてくれるようです。しかし、チャートを観察するということは、惑星が移動していく事も、同時に観察をすることです。移動後のディグニティーがどう推移していくかは、今のところ表を頼るしか無さそうです。

 

チャートの観察において、チャートを読み始める前に行う事柄の中で、惑星のディグニティーの観察は、一番最初ではありませんが、とても早い時期に行われます。何故ならば、惑星はチャートの主役だからです。

エッセンシャル・ディグニティーとアクシデンタル・ディグニティーの違いは、必ずしも定義と一致しません。定義では、エッセンシャル・ディグニティーは、良い⇔悪い。アクシデンタル・ディグニティーは、強い⇔弱いです。この世には、善し悪しで判断できるモノと、そのモノのらしさを言う場合もあります。

 

例えばペットを手に入れようとしていて、友人の元で生まれた子犬の赤ちゃんのディグニティーが高いとします。これは、子犬の可愛いことを表わすのでしょうか?  その子犬の血統の良さを表わすのでしょうか?  あるいは、番犬として役に立つことを示すのでしょうか?  おそらく、その犬が飼い主に上手になつく事を表わす為にディグニティーが高く示されているのだと思います。

子犬が可愛い時は、子犬を示す惑星と金星の間に良好なアスペクトがあるか、同時に金星のタームを持つかもしれません。子犬の血統の良さは、子犬を示す惑星と他のディグニティーの高い惑星とのアスペクトから予想できるかもしれません。番犬として役に立つなら、同時に強さを示すアクシデンタル・ディグニティーも高いに違いありません。

 

すると、アクシデンタル・ディグニティーとは何かが重要になります。アクシデンタル・ディグニティーにも表があります。こちらの表にも点数が付けられていますが、エッセンシャル・ディグニティーのように足す為の点数ではありません。こちらの点数は要素の違う点数です。仕事をする人の手と、猫の手を足しても役に立たないように、足すことはできません。猫の手も借りたいとは言いますが…


エッセンシャル・ディグニティーの表の見方

エッセンシャル・ディグニティーの表からどのようにその惑星のディグニティーを導き出すのでしょう。手順は次のようになります。リンク先から、エッセンシャル・ディグニティーの表をご用意ください。

上記のようなチャートが目の前にあるとします。太陽を観察すると、牡牛のサインの14.56となっています。できれば、紙に牡牛のサインと太陽の度数を書き込みます。

 

エッセンシャル・ディグニティー表から牡牛のサインの欄をたどります。表の四行目が牡牛のサインの欄です。表の一番上には、サイン・ルーラー、イグザルテーション、トリプリシティー、ターム、フェース、デトリメント、フォールと書かれていて、二行目には点数が書かれています。この点数は足したり引いたりできます。四行目、牡牛のサインの行に戻ると、サイン・ルーラーの欄との交点には「♀」のマークが描かれています。ドミサイル「サインのルーラー」は金星となります。牡羊のサインは金星がルールする(支配する)サインです。太陽は金星の支配を受けています。支配を受けると言っても、強制的に支配しているわけではなく(戦いの場合は別ですが)、お客様を迎い入れている店主の感覚に近いものです。ですから、ルーラーと呼んでいますが、支配ではなくマネジメント役、チーフ・マネジャーです。

それが総じてルーラー(支配者)と呼ばれるようになったわけは、戦いのチャートではルーラーと呼ばなければ読み間違えるからでしょう。占星術は戦争によって鍛えられてきたからかもしれません。ドミサイル(居住地)と呼んだ方が適切だと思いますが、これまでルーラーという言葉を使い続けてきたので、このままルーラーでいきます。

 

牡牛のサインでは太陽は金星にルールされています。イグザルテーションでは、月がそのイグザルテーションのルーラーとなります。太陽と14.56と書いた隣に♀、そしてその隣に☽を書き込みます。次はトリプリシティーのルーラーを探します。トリプリシティーには2つあって、一つは昼に、一つは夜のものです。これは、チャートが昼なら昼の物を、夜なら夜の物をあてがいます。チャートが昼とは、太陽が地平線より上なら昼です。地平線から沈んでいれば単純に夜となります。このチャートは太陽が地平線より上に昇っていますから、トリプリシティーの昼の方を採用します。♀です。

 

タームは不ぞろいの5つの部分に分かれています。その中から、14.56度に当てはまる部分を見付け出し、その上に書かれている惑星をタームのルーラーとします。牡牛の14.56度はタームの2番目の欄に当てはまります。☿です。上の数字は終端位置を示しますが、ゼロの概念が無かった時代に生まれたものだからです。

 

フェースは真ん中の欄、10度~19.59度に入りますから☽となります。

 

デトリメントは♂。フォールはありません。

 

これで、太陽に関するディグニティーが出そろいました。太陽はこの中に出てきません。ディグニティーは無いのか?  ペレグリンと呼ばれるディグニティーの一種を獲得します。太陽はペレグリンとなります。

 

その他の惑星も同じように表と照らし合わせながら、書き込むことになります。

 


サイン「ドミサイル」のディグニティー

ドミサイルのディグニティーを得ているということは、昔からその惑星が自分の家に居て、自らの決めたルールの元にあると喩えられてきました。

 

質問に関わる事柄において、ディグニティーを得るとは何かを事ごとに判断するべきです。恋愛の質問では、彼が♂で示されているとして、牡羊のサインや蠍のサインに入っていることは、一見良さそうに思えますが、彼は彼自身をマネジメントしていることになり、恋愛ではあまり良い表示となりません。この質問の中では、彼が徳の高い人物であるとか、男性としての魅力に溢れているとか、仕事ができる事を示すわけではありません。

 

イグザルテーションのディグニティー

質問に関わる事柄に於いて、やはり高いディグニティーを得ることになります。彼が自らの主権(王権)の場所に居ることは、住み家の持ち主を超える広い統治区域を持つ事を示しています。

「私は占星術を習いたいけれども、あの先生はどうか?」

この質問で先生を表わす9ハウスのロードがイグザルテーションのディグニティーを得ていたとします。先生は、見かけよりも良く見える、最高の先生に見えてしまうことを表わしています。悪い先生なのかというと、そうでは無く良い先生です。しかし、最高ランクの先生だと勘違いをすることを示します。

 

これは、先生の質の問題ではなく、質問者にとって先生が分かり易く教えてくれるかどうかをチャートが答えてくれているのです。ホラリーは質問に依存するからです。

 

トリプリシティーのディグニティー

昔から喩えとして、それ自身の名誉ある場所に置かれているとか、公共の地位を得ているとか言われます。それほど高いディグニティーでなくとも、それなりの地位として認められるディグニティーです。

 

 

ターム(バウンド)のディグニティー

喩えとしては、家族と一緒に居る人にされています。両親からの庇護を受けているとか、兄弟が助けてくれる状況にあるという意味とされます。

 

 

フェースのディグニティー

このディグニティーは、一定の度数(10゜)毎にルーラーが変わります。喩えとして、綺麗な洋服を着ている、豪華な装飾品を身に付けていることで、ちょっと人から注目を浴びているような時間を表わします。

 


デトリメント

ディグニティーと呼ばずに、デビリティーと呼ばれます。サインのディグニティーを得る場所と丁度オポジションになるサインに入っている時にこれが起こります。デトリメントの惑星は、弱くされ、自分の意思を貫けないと感じます。他にも極端さに至ると書かれているものもあります。

 

 

フォール

落ちる。どこに落ちたのかというと、井戸に落ちた人物に喩えられてきました。井戸の底で叫ぼうとも、遠くに声は届きません。ちょうど側を通りかかった惑星が、そのサインでディグニティーを持っていなければ助けられないように、フォールに落ちた人物は、助けられにくいのです。

 

 


ペレグリン

この他に、惑星にはペレグリンという状態に置かれる事があります。それは、その当該の惑星が、サインでなく、イグザルテーションでなく、トリプリシティーでなく、タームでもなく、フェースでもなく、デトリメントや、フォールでも無い時に巡礼者に喩えられる状態に至ります。

 

この状態にある惑星は、良い事も悪い事も知っていながら、旅の途上で少し狡猾でずるくなるとされます。